この作品はロボットが心を持ったとしたらという主題で描かれた作品である。古くは『鉄腕アトム』などで扱われている主題だが、ここでは心を持ったロボットが、自我に目覚め、目的を持ちそして様々な心の動きを自覚する流れが、時に直接的に、時に抽象的に描かれており、単なる心を持った機械が活躍するという話ではない。言ってみれば心の発露から育ち、作られていく流れを描いているのだろう。
また作風も独特で、前半のハイテンションなギャグが後半になるとなりを潜め、暗くどんよりとした雰囲気に変貌する。その格差に戸惑いながらも、物語にどんどん引き込まれていく。心を持つということは人間になることではない。ロボットにはロボットとしての心が存在する。そういうことなのだろうか。
単なるSFでは満足できない人、心の存在に興味がある人はご一読あれ。
希望と絶望、恐怖と愛、美と醜が入り混じったかなり深い、一大絵巻。ことの始まりから結末まで、登場人物たちは、少しずついろんなものを失いながら、たんたんと時を重ねる。そして、最後に残るものは……。
ラストの衝撃を多くの方に味わって欲しいです。
このデータは、06年02月12日0時41分29秒現在のデータであり、現時点では変更されている可能性があります。