はじめて読んだ原作のマンガでは、悩み苦しむジローの姿が多く描かれていて、テレビ特撮版とは比べ物にならないほど「悩み・苦しみ」の部分が掘り下げられています。自分の不完全さに悩み、同じ人物から造られた兄弟ともいえるロボットと戦わねばならないことに悩み、人間の女性に寄せる仄かな思いに苦しむ人造人間のキカイダー・ジローの姿は、読み手に共感を覚えさせるとともに、ただのヒーローものとは違って物語に深みを与えています。後半、キカイダー01(ゼロワン)が登場するあたりからアクションが中心になり、これはこれでおもしろいのですが、ジローの悩む姿が少なくなってくるのが(ジローには申し訳ないけど)残念です。
自然破壊への警鐘、機械文明への懐疑、悩み苦しむ主人公など、石ノ森作品にはよく見られる主題が、この『人造人間キカイダー』にも見られますが、決してマンネリなどではなく、『仮面ライダー』『サイボーグ009』に並ぶ、作者の代表作です。
このデータは、06年02月12日0時42分11秒現在のデータであり、現時点では変更されている可能性があります。