しかし、この作品は未完成らしいので、しっかり完結していたら、手塚さんなりの回答を見ることが出来たであろうと思うと少し残念な気もしますが、より大きな視点で見れば、未完成で良かったのではないでしょうか。
未来編や宇宙編なんかは壮絶なものを感じます。手塚治虫の最高傑作を一度読まれてみてはいかがでしょう。
「火の鳥」は手塚治虫の代表作とされていますが、私はCOM時代のものが特に優れていると思います。中でも「未来編」では、人類の滅亡から再生までという、とてつもないスケールの時間が流れます。「火の鳥」のテーマが明確に打ち出されていて、もっとも手塚治虫らしい、いわば「火の鳥」の中の「火の鳥」と言える作品だと思います。
この物語の主人公「我王」は、輪廻という大きな生命の輪の中で「なぜ人は生きるのか?」「なぜ死ぬのか?」ということについて悩み、苦しんでいます。奈良の大仏建造を時代背景に紡がれていく物語には、この私達にもそれと同じ疑問が投げかけられているのではないでしょうか。
「鳳凰編」は、このシリーズの中でも一番完成度が高い最高傑作だといわれています。それは個々の判断にお任せしますが、とても考えさせられ、人生観すらも変えてしまいそうな壮大な物語です。全巻購入することをおすすめします。
「火の鳥」では、たいてい強欲な権力者たちが永遠の命の源である火の鳥の生き血を躍起になって求める。地球では、高校生だった少女が、主人公になっている。本編は、そこがほかの作品とは違う。異色なんです。
永遠の命なんて、もてないんですよね。人間だって、それが出来ないから虫や鳥のようにすべての生き物は恋をして結婚して、子孫を残す。自分の分身であり、愛する人の分身を。
近親相姦を主人公がすることになるのですが、そんな非常な状況でもひたむき、というかキャラクターに勢いがありますね。
ストーリーの中にいくつかの謎がありますが!、それもまた、深みが増している感じです。
手塚さんはハリウッド映画のようなエンターテイメント性を大切にしている。前半の3ページぐらいは、コマワリが、大変に映画的。映画のようなラブシーン。
短い中に、多くのことが詰まっています。密度の濃い作品ですよね。
この「火の鳥」シリーズは、漫画の一つの完成形なのかも知れない。その完成度は、芸術にまで昇華している。
「日本が漫画先進国なのは、手塚治虫がいたからだ。」という言葉を聞いたことがあるが、全くその通りだと思う。この作品を読めば分かります。
この9巻は、私の好きな「宇宙、生命編」です。人間の「業」が激しく描かれています。是非。
いつの時代も変わらぬ人間の権力欲、名誉欲のなかで、たった一つの愛情だけは信じつづけたい。うそだらけの宗教と、腐った政治を見せつけられ、それでも新しい世界を信じたい、そんな人々の希望を食って、火の鳥は生き続ける。時代を超え、種族を超えて、結ばれる二人を、火の鳥は「本当に自由な世界」へと導いてくれるのか。
このデータは、06年02月12日0時52分25秒現在のデータであり、現時点では変更されている可能性があります。