この物語には、確かにカムイという名の少年が登場する。しかし、物語の主人公はカムイだけにとどまらず、この時代に生きた多くの人間、そして動物たちにまで及ぶ。
時は身分制度の厳しい徳川幕府下、場所はとある村落を中心に始まる。学校で日本史を学ぶときの視点・論点とは異なり、実際の農民の生活、封建制度の実態は実はこんなものだったのではないのかと、考えさせられる内容で、それだけにとどまらず、物語を通して、いわゆるコラム的な説明があり、日本の自然、風物、風俗など現代ではもはやあまり聞く事もない数々の知識を学ぶこともできる。
白土三平の画業50年を記念する全集の出版だが、全38巻の予定である。第一部が15巻、第二部が12巻、外伝が11巻で、10月28日には第一部の第3&4巻が配本され(月一回二冊のペース)、以下、第二部は2006年4月より、外伝は同10月より配本の予定である。
文庫サイズよりも一回り大きく、読みやすくなっている。
第4巻ではいよいよ忍者物語らしくなり、まだ修行中の身だが、忍びとしてのカムイの活躍が始まろうとする。
この物語の主人公はカムイだけにとどまらず、下人(身分的には百姓の奴隷)、オオカミ、元百姓、元武士だが今は非人に身をやつして大義を果たそうとする人々など実に人間くさいさまざまなヒーローが登場する。そう、主人公は一人ではないのだ。
物語はテンポ良く進み、非常に読みやすい。江戸時代、徳川幕府下の厳しい身分秩序下の物語だが、当時の風俗・習慣や風物も随所に説明があり、現代人にぜひ心に留め置いて欲しい「日本の原点」が描かれている。
物語は何か大きなものを予感させる方向で進んでいく。今後の展開が楽しみである。
このデータは、06年02月12日0時48分23秒現在のデータであり、現時点では変更されている可能性があります。